あなたのだんなさんが、何らかの事業により債務超過に陥ってしまい、債務不履行状態となって、社会生活が困難になってきた場合には、債務整理の最終手段である自己破産を真剣に検討することになると思います。
その際に、だんなさんのお仕事、職種如何によっては、だんなさんが裁判所に自己破産の申し立てをした時点から、「資格制限」を受け、その資格を喪失するというケースがあります。
その資格制限を受ける職種は、実に160種類以上にも及びます。これは、破産法に定められているわけではなく、各々の資格を要する職業の個別の法令に、その制限を設けているものに従うこととなるわけです。
この場合には、だんなさんが自己破産の申し立てをして、破産手続きが開始されると同時に、あなたのだんなさんは失職するわけです。
妻であり一家の家計を切り盛りするあなたとしては気が気ではないですね。だって、失職したら収入も失うわけですから。
しかし、安心してください。
一般的に、資格制限を受けて失職する期間は、「裁判所に自己破産の申し立てをしてから、裁判所が免責許可を下すまでの期間だけ」で、免責許可が確定すれば、復権が認められ、仕事に復帰できます。
ですから、失職に耐える必要があるのは、自己破産の申し立て~免責許可確定までの期間です。
一般的には、だいたいこの期間というのは、約半年~1年といったところが相場のようです。
以下では、あなたのだんなさんが自己破産した場合に、資格制限を受けて失職になる資格や職種を具体的に掘り下げて、その特徴や、妻であるあなたはどのように対処していけばよいのか?などを少し掘り下げて考察していきたいと思います。
あなたのだんなさんがこの職業に就いていたなら要注意!!
あなたのだんなさんが、誰かの連帯保証人になっていて、その債務者本人が破産してしまった場合などには、あなたのだんなさんに債務は降りかかってきて、その結果、債務不履行に陥ってしまうケースなどが増えています。
こういったケースでは、あなたのだんなさんも、早めに手を打っていかないとあなたの家の家計も大変なことになってしまいますよね。
こういう場合には、あなたのだんなさんも、債務整理の最終手段である自己破産を選択する確率が高くなると思います。
そのような事情で、あなたのだんなさんが裁判所に自己破産の申し立てをしようとするときに、妻であるあなたがもっとも気になるのは、だんなさんが自己破産の申し立てをしたことによって生じる問題やデメリットでしょう。
そのデメリットの最たるものは、だんなさんの職業によっても変わってきます。
だんなさんの職業によって生じるデメリットの代表的なものは、「資格制限」による失職です。
これは該当する資格を要する職業によっては、自己破産の手続き開始から、免責事由の決定までの期間は、制限が生じ、その仕事ができなくなります。
その職種の数は、多岐に渡り、なんと160種類以上の職種に及んでいます。
ここでは、その代表的なものを以下に列挙していきます。
あなたも含めてだんなさんが、以下の職業に該当している場合には気を付けてください。
資格制限を受ける代表的な職種
- ・税理士
- ・行政書士
- ・司法書士
- ・人事院の人事官
- ・都道府県公安員会委員
- ・教育委員会委員
- ・商工会議所会員
- ・証券外務員
- ・商品投資販売業
- ・商品投資顧問業
- ・漁業信用基金協会会員
- ・質屋
- ・旅行業者
- ・警備員
- ・不動産鑑定業者
- ・風俗営業者または風俗営業を営もうとする者
- ・弁護士
- ・公認会計士
- ・弁理士
- ・土地家屋調査士
等々。
これらの主に資格を要する職種においては、それぞれの資格や職業の法令に基づいて、あなたのだんなさんが自己破産の申し立てを行ってから、免責許可が下りすまでの期間は、仕事ができない、失職ということになります。
ですが、くれぐれも勘違いしないでほしいのは、絶望することはないということです。
あなたのだんなさんが、これらの資格制限を受けて失職する期間というのは、自己破産手続き開始~免責事由決定のせいぜい数か月のこと(長い場合でも1年程度)になります。
自暴自棄にならずに、その間の対策をしっかり検討して、準備さえしておけば、何ら問題無いでしょう。
資格制限を受けない資格職業もあるので、よく調べて!!
上で述べたように、多くの資格職においては、自己破産の申し立てをすると、その職業や資格の独自の法令に従って、資格制限を受けてしまい、裁判所が免責許可の決定を下すまでの期間はその仕事ができない、失職するケースが多いわけです。
ですが、すべての資格を要する仕事が、資格制限を受けるのかといえばそうではありません。
その代表的なものは医療に従事する資格職です。
すなわち、医師や歯科医師をはじめ、薬剤師や看護師などの医療系の国家資格を要するお仕事に従事している場合においては、自己破産の申し立てをしても、その職業には、資格制限は生じず、何ら問題なく破産手続き期間であっても、仕事を続けることができます。
このように、資格職であっても、失職しない職種もあるので、あなたのだんなさんの職種に応じて個別に調べておくことはとても重要でしょう。
法律上で制限される資格4種とは!?
あなたのだんなさんが、各々の資格や職業に関する法令で規定された事項に抵触する職種に従事している場合には、自己破産申し立てした時点から、免責許可が下りるまでの期間は失職して、そのお仕事ができなくなることは前述しました。
これとは別に、今度は、民法上で制限されている役目・役割というものもあります。
あなたのだんなさんが、以下に挙げる4種の役目や役割に就いている場合には、自己破産手続きの開始から、免責事由決定までの間はこれらの役割を果たすことはできなくなりますので覚えておいてください。
1.遺言執行者
遺言の内容を実現するために必要な手続きや行為をする遺言執行者をあなたのだんなさんがやっている場合には、民法第1009条の規定によって、免責許可決定までこの役割を制限されます。
2.後見人
未成年の子供や、判断能力の欠如した高齢者に代わってその人を援助するために選任される後見人を、あなたのだんなさんがやっている場合には、民法第847条の規定によって、免責許可決定までこの役割を制限されます。
3.後見監督人
後見人の監督をする後見監督人にあなたのだんなさんが選任されている場合には、民法第852条の規定によって、免責許可決定までこの役割を制限されます。
4.代理人
自分以外の利益の為にその行為や手続き等を代わって行う代理人をあなたのだんなさんがやっている場合には、民法第111条の、「代理権の消滅事由」該当によって、免責許可決定までこの役割を制限されます。
これらの4種の役目・役割は、民法によって制限されているので、頭に入れておきましょう。
まとめ
あなたのだんなさんがやむをえない事情から、債務整理の最終手段である自己破産を選択して、その申し立てを裁判所にする際-。
あなたのだんなさんの職業によっては、資格制限を受けるということは理解していただけたと思います。
しかし、だからといって、ずっと失職するわけではなく、裁判所に自己破産の申し立てを行ってから、破産手続きを開始した時から、免責許可決定までの、約数か月~1年ほどの間の話です。
免責許可が下りれば、ただちに復権され、あなたのだんなさんは仕事復帰できるわけですから、必要以上にネガティブに捉えないことですね。
その数か月~1年程度の期間を事前に、妻であるあなたが有効に使えるように、色々と戦略を練っておくと良いと思います。